変遷する世界における絶対価値の追求

 

日付:1977年11月25日
場所:米国・サンフランシスコ、フェアモント・ホテル
行事:第6回「科学の統一に関する国際会議」

 

 議長および著名な学者、そして科学者の皆様! 第6回「科学の統一に関する国際会議」にお迎えしたことをうれしく思います。

 皆様の中には、過去にこの会議に参席し、互いに親しくなった方たちもいらっしゃり、また初めて参加された方たちもいらっしゃると思います。いずれにせよ、私たちが互いに出会うたびに、急変する世界情勢の中で、この会議の課題について率直な意見交換ができる新たな機会をもつようになります。

 私は宗教指導者として、そして科学者として、長い間、科学の問題や宗教と哲学の問題について関心をもってきました。そのような関心が、これまで数度に渡って「科学の統一に関する国際会議」を開くようにさせたのだと思います。たとえある人が永遠性に関する何かの内容を追求していようと、あるいは、また他の人が何かの事実を観察していようと、その互いに異なる学術分野の間には一つの関係があると私は信じています。

 事実上、超越的な現実の関係がなければ、時間と空間の中で引き起こされている何かの事実を認知することは不可能です。宗教と哲学は、長い間、人間の良心を占領している抽象的で道徳的な問題を扱ってきました。私たちは一体どこから来たのか、なぜ苦痛が生じるようになったのか、善悪というものは何か、死後の世界は果たしてあるのか、このような質問は、自分たちの学術問題とは関係なく、あらゆる人たちに与えられているものです。

 科学というものは、宇宙の規則性と、時間と空間における事物に対する理解に限定されています。私たちがよく知っているように、科学は過去数百年間に目覚ましい発展を繰り返してきました。しかし、価値観が確立されていない科学は、破壊的なものにならざるを得ません。核戦争の可能性がこれを物語っています。そのため、今回の会議では、過去の会議と同じように、科学と価値基準の関係を主題として扱うことになりました。

 私の意見としては、神学から物理学に至るまで、あらゆる知識というものは、その知識の目的と方向性を知らなければ、それは無意味だと言わざるを得ません。そして、価値基準の追求とは、正にこの目的のための追求です。

 この共同の探究において、分野が互いに異なるあらゆる知識は、互いに関係をもっています。事実上、真なる知識に矛盾はあり得ません。ある一分野における発展は、明らかに他の分野の研究にも重大な影響を与えてくれます。

 今世紀において、科学界の困難な発見は、異なる研究分野に従事する人々の考え方と行動にとても大きな影響を及ぼしました。例えば、相対性原理と不可知論というものが、たとえ多くの誤解をもたらしたとしても、それらは間違いなく影響をもたらしました。

 このように、様々な研究分野における知識というものは互いに関連性をもっていますが、ともすれば学者たちは、自分自身の研究分野だけに固着する、そのような傾向をもちやすいのです。極端な専門化は、それを追求する個人以外の他の人にとっては、とても些少な意味ばかりをもたらす知識になりやすいのです。発見の喜びというものは、その学者をして、異なる分野の人々にも理解できるように伝えてあげたいと思うようにさせるものであるはずです。

 私たちは、私たちの知識が皮相的で不確実なものにならないようにするため、他の人たちの意見を聞くことを喜ぶことができなければなりません。宗教者たちは、特にルネッサンス以降、科学の発展によって脅威にさらされてきました。しかし、いわゆる宗教者と言われる人たちが、発達する知識と科学技術に対する理解なくして、果たしてどのように飢餓と疾病、そして老衰と不十分な衣食住の問題を解決することができるでしょうか。確実に科学は、このような目的のために大きく貢献してきました。

 また一方、人間と宇宙の神秘性と驚異性を考察するにおいて、宗教と科学は、どちらも霊感と論理と観察を通して、宇宙と人類を存在せしめたその原因を説明しようとしてきました。私たちの起源と目的に関するそのような考察は、私たち人間がどこまでも人間であるがゆえにそのように継続されてきたのですが、それはまた、私たちの途絶えることのないエネルギー源をも形成させてきたのです。このような意味において、20世紀の宇宙学者と生物学者たちは、神学者と哲学者たちの関心事と関係をもっているのです。

 人間は、人間とこの世界の驚異を考察するにおいて、経済的で政治的な内容と意味を考えざるを得ません。人間たちは各自、愛と善と美の性質と、その表現のための可能性をもっています。しかし、今日の多くの国家と政府は、私たち人間を経済的な価値しかもっていない動物と見なしています。

 人々が単に国家の意見と異なる意見を語ったとして、政府が市民を迫害する場合があります。不幸にも、無政府主義者たちと暴力主義者たちが、恐ろしい暴力で民主主義を破壊しようとしているのです。私たちが今、この会議場で価値の基準を設定しようとしているこのときにも、正義と自由、そして人間の尊厳という価値および人類の創造的な発展を脅かす政治的な、そして社会的な現実があることを私たちは記憶する必要があります。

 学者でいらっしゃる皆様のアイデアと発見は、皆様が直接、教えている学生たちは言うまでもなく、政府とマスメディア、そして社会的な傾向に大きな影響を与えます。したがって皆様は、人間と人間が生きている世界の諸条件を改善しなければならないという重大な責任を背負っているのです。

 この会議に参席した皆様、皆様の様々な研究がもたらした発見と発展に対する真価を認識することがとても重要です。ですから、私たちは、より良い未来を理解できなければなりません。今年のこの会議の主題は「変遷する世界における絶対価値の追求」です。

 私は、皆様の研究と学問が今会議の主題のために優れた成果をもたらしてくださることを願います。皆様の信じるところをすべて自由に発表してくださるようにお願いします。このような雰囲気はとても意義深い集いにしてくれるでしょう。最後に、3日間に渡って多くの課題を扱ってくださるために参席してくださった皆様に感謝の言葉を申し上げます。この会議が皆様のために豊かな経験をもたらしてくれることを希望します。ありがとうございました。