絶対価値と新しい世界の創造
日付:1981年11月10日
場所:韓国、ソウル、世宗文化会館
行事:第10回「科学の統一に関する国際会議」
尊敬する議長、議長団ならびに著名な教授各位と紳士淑女の皆様が、第10回「科学の統一に関する国際会議」に参加するために韓国にお越しくださり、深く感謝の意を表します。
韓国は私の故国でもあります。皆様は、韓国動乱の時に参戦した16カ国の軍人たちの犠牲に思いを馳せられるでしょう。また、韓国は南北に分断された哀れな国ですが、大きな意味のある国でもあります。韓国とアジアを知り、研究してくださることを願ってやみません。
これから私がお話しする内容は、政治的というよりは、高次元的な宗教的内容の話として理解してくださることと思います。
人類社会における上下階級間の統一
今日の人類社会には、多様な対立闘争が存在します。人種や民族、あるいは社会において、上下の階層間の対立がありますが、その中でも最も深刻な問題は、貧富の差による上下間の対立です。
白人を中心とした北半球において、アメリカとヨーロッパの先進諸国の人口は概して八億ほどと推定され、世界的に見ると上流層に属しています。それに比べ、中国やインドなど、アジア諸国には30億の人口が住んでおり、中間の位置を占めています。ここに、5億のアフリカ、中南米、オセアニアなどの黒人を中心とした勢力が、経済的に最も貧困な下流層を形成しています。このような経済的貧富の差は、今日の世界における最も深刻な問題であり、いわゆる「南北問題」として国連などでも常に取り上げられている問題です。
このような問題の解決に対して最も可能性のある道は、欧米の白人社会とアフリカの黒人との中間に位置するアジア人を中心として、上下層を融合することです。20世紀の今日において、あらゆる重要な問題は、世界的な規模で解決されなければなりません。そのような観点から見るとき、上流層の人々にいかにして自らの意志で進んで下に降りてくるようにさせるかが問題になります。
それだけではなく、有史以来人類は、この上下層間の格差を解消する方向へと歩んできたのは、紛れもない事実です。このような潮流の中で最も代表的な例が共産主義です。共産主義思想は、人類社会における階級間の搾取をなくし、階級のない社会を建設しようとするものです。しかし、共産主義の最大の問題点は、無神論であるということであり、神様を否定した土台の上にそのような理想世界を建設しようとしたところに問題があります。また、共産主義は一部の独裁者の私意によって、すべてを行おうとしたところに問題があるのです。
このような諸問題を克服し、新しい解決の道を探すためには、私たちが今まで固守してきた人本主義を離れ、神本主義による新しい思想、すなわち新しい中心核が必要になります。上下を中心核に一致させる中心的機能が必要です。それがすなわち宗教です。個人や一家庭の救援よりも世界救援を目指している宗教は、本来このような使命を成就しなければなりません。このような上中下の各層を結集するためには、その中心核的使命を果たす宗教が必要になります。
それでは、統一教会とは一体いかなる宗教でしょうか。正にこのような歴史的な使命を果たす運命をもっているのが宗教なのです。この目的のために私は開拓の道を歩んできました。世界の多くの人々が私に会おうとするのは、実に歴史的に見て避けられないことなのです。
韓半島(朝鮮半島)の文明的位置
私たちの住む地球は、陸地と海洋とに分かれています。その中でも半島は、地理学的に見ると大陸と海洋を連結する中間的位置にあります。したがって、古くから半島は、文明の形成において常に注目に値する場所となってきました。古代文明が繁栄したギリシャやローマも半島であり、イベリア半島にあるスペインとポルトガルの文明も半島で発達しました。しかし、このような文明は、今日、世界へと拡大し、新しい東西文明が出現しなければなりません。アジアの韓半島は、正にこの文明の出現地なのです。
世界文明の方向は、世界を一周しながら発達していきます。すなわち、エジプトの大陸文明、ローマとギリシャの半島文明、イギリスの島嶼文明、アメリカの大陸文明へと発達し、そして文明は西進して太平洋を渡り、日本の島嶼文明へ、ついには韓半島文明として結集するためにアジアに連結されているのです。ここで結束した文化は高次元的な文化として新世界を創造するでしょう。
日本は島国として、アジアで初めて西洋文明を定着させました。次は半島文明時代です。韓半島は、東洋と西洋の文明が一致する場所です。歴史学者シュペングラーが指摘していますが、文明は、1年に春夏秋冬があるのと同じように、興亡を繰り返してきました。今は、大西洋文明時代が過ぎ去り、太平洋文明の時代が訪れるときです。
韓国の地政学的現状を見ても、アメリカ、日本、中国、ソ連という4大強国の中央に位置しています。アメリカはソ連に対抗するために多大な努力を傾注しています。そのソ連が、ヨーロッパではドイツを東西に分割して半分を占拠し、またアジアにおいては韓半島を南北に分けてその半分を支配圏に置いています。ところが、その4カ国の勢力が対立しているのは、ヨーロッパではなく、韓半島を中心としたアジアです。ですから、アメリカは、より大きな大陸であるアジアに関心をもたざるを得ない立場にあります。このような情勢から見ても、韓国はすべての面で東西南北間の宿命的対決を解決すべき、そのような基本的役割を果たす国であると思います。
ここで現実的な可能性を見ることにしましょう。韓国人は正義感が強く宗教的で、極めて有能であり、多方面に能力を発揮します。一つのことで行き詰まれば、直ちに大胆かつ勇敢に他の所へと方向転換できる適応能力があります。これは韓国人の優れた特徴であると十分に見ることができるでしょう。
私はこのような韓国民族の中で生まれ、統一教会はこのような背景で発展してきました。私たちはこのような歴史的結実として、黄色人種を中心として上下階層の人々を融合、一体化させる世界的な使命を果たすべきであると思っています。統一教会はこのような目的を果たして余りある宗教的な内容を具備しています。この目的のために、私は世界の至る所で、あらゆる部門において最善を尽くす決意をもっています。
絶対的価値である神様の愛
歴史的に、上流層と下流層の人を一体化させるためには、上流層の人々は下流層に同化させ、下流層の人々は上流層へと引き上げなければなりません。そうするためには、絶対的価値の中心点が必要です。それが神様の愛なのです。
神様の愛とは何でしょうか。それは最上級の人とも共有でき、最下級の人とも共有できるものです。神様の愛は一方的なものではありません。神様の愛は、球形で回転作用をする力です。最上から最下に至るまで自由に移動することができます。それがどこに現れても、すべての所で全体から歓迎されます。そして、いつでもどこでも同化します。
また、神様の愛は、いつでもどこでも絶対的な価値をもっています。私たちが神様の愛の中にいれば、幸福で、すべてが満たされ、保障されます。最下の所にいても最上の人を愛することができ、最上の立場にありながらも最下の立場にある人を愛することができます。このようにきわめて自由なのです。このような神様の愛の中にいる人は、世界のどこへ行っても大歓迎を受けるでしょう。これが、統一教会の会員たちが世界中のどこに行っても、人々が心から喜んでついて来る理由なのです。
統一教会は、救いを神様の愛に求めてきました。そして、統一教会が掲げた新しい理念が、共産主義や資本主義よりもはるかに優れたものであるということを知り、神様の愛によって地上天国が実現されるなら、万民はこれを喜んで受け入れるでしょう。
本当に今日の世界情勢を理解するためには、神様のみ旨のある韓国の事情を理解しなければなりません。なぜなら、韓国それ自体の中に、世界のすべてが縮小されて存在しているからです。
例を挙げれば、韓国は、現在の世界における主要思潮である民主主義と共産主義をはじめとして、キリスト教と仏教、儒教、イスラームなどの四大宗教がすべて存在し、高い水準を形成しています。東西文化の接点であると同時に、四大強国の政治勢力がこの地を中心としてぶつかり合っています。すべてが韓国自体の中に象徴的に存在しているのです。韓国は、必然的にそれらをみな融合させようとする神様の摂理的運命を担っているのです。
結論的に、韓国は、統一運動を中心とした、次の四つの大きな課題を克服しなければなりません。第1に、超教派超宗派運動による宗教の統一、第2に、勝共運動を通した唯物共産主義の克服による思想的統一、第3に、東西文化を融合した新しい生活様式による文化の統一、第4に、新しい理念による経済の統一です。
私たちの統一運動は、絶対価値である神様の愛で万民を親兄弟以上に愛することによって、統一世界を形成し、地上天国を実現するでしょう。そうして、神様と人類が願う新しい世界の創造が完成されるのです。神様の愛においてのみ、真の勝利があり、真の平和と真の幸福が永遠にあるのです。
韓国を中心としたアジアの将来
先に列挙した四つの点において、韓国は、統一運動によってすべてを統一する能力があります。そのうち、最初の三つの点においては、既に成し遂げられつつあると言うことができます。しかし、最後の経済問題に関しては、今、成し遂げようと努力しているところです。韓国は今、経済が急速に発展しています。
しかし、いまだに世界的な先進水準に到達したとは言えません。それでは、どのようにすれば、これを成し遂げることができるのでしょうか。これを成し遂げることが、私たちの統一運動の使命です。この目的のために、私は高度に発達したドイツの機械技術と韓国の産業との提携を図っているのです。霊的には既に統一運動は、日本とアメリカを連結することに成功しました。アメリカとヨーロッパは文化的に既に連結されています。
今まで神様はこのような摂理を成就するために、第2次世界大戦後、ドイツと日本を経済的に復興させました。特に日本は、今日、世界的な経済大国になりました。ドイツさえも、日本の経済的成功に脅威を感じています。ドイツがこれを防御するためには、韓国と手を結び、品質の良い物を廉価で生産して日本に販売する道と、第3世界圏を同位利益圏に参加させる道以外には希望がありません。そのようにして、日本を参加させれば、世界的な経済統一の道が新たに開かれるようになるでしょう。
現実的に世界に共産主義勢力の侵略政策が存在する限り、世界平和の到来はあり得ず、また経済的統一も不可能です。もし韓国とアメリカ、ドイツ、日本、そして中国が一体となれば、世界的にソ連の侵略に対抗することができます。現在、中国は共産国家ですが、自国の近代化のために日本やアメリカ、ドイツに対して友好関係を維持することを望んでいます。歴史的に見て、中国はソ連に接近することを願わないでしょう。
アメリカは、ソ連に対抗するために軍備の強化を急いでいます。日本、ドイツ、中国とも手を握ろうとしていますが、日本は過去の事情や国内の事情により、軍備増強に意欲的ではありません。一方、韓国は現在、国家的立場から見ると軍備増強に極めて意欲的です。アメリカとしては、韓国を軸にしようとする考えもありますが、韓国だけではあまりにも小さいので、韓国と中国を合わせて対ソ防衛の軸とすることを考えるでしょう。しかし、中国は、自国の重工業の発展を願ってはいても、その基盤が貧弱なので、今後も相当な期間を必要とするでしょう。
また中国としては、ドイツなどの進歩した産業技術を導入しようとしても、地理的にあまりにも距離が遠く、文化の差も相当に大きいので、それは非常に無理があることです。しかし、ここで中国にとってはよい選択肢があるのですが、それは中国東北部に居留する300万の朝鮮族を起用することです。
この面で韓国とドイツの技術を大幅に活用できるので、統一教会は韓国とドイツを連結しようとするのです。韓国の同胞たちは、中国と日本とアメリカを連結しています。韓国は、過去の歴史的経緯を見ても、他国を侵略した例がないので、中国としては無理なく提携していこうとするはずです。日本は軍備を強化することは願わないとしても、武器を作る技術と能力はもっているので、中国で生産することができるのです。
ここで私たちは一つの結論に到達します。もし韓国が統一教会と共に一つの役割を担当するとしたら、日本とドイツ、そしてアメリカの技術を中国に移転して対ソ防衛を強化し、第3世界圏に最高の技術を連結させて、平和世界へと進み出るでしょう。
これらの国々が韓国を仲介として相互連結することが、様々な面で有益であるということを理解するでしょう。このようにして、アジア三国の経済的連合が形成されると同時に、アメリカとドイツも同時に連結されるので、ソ連共産主義の脅威を防止するだけではなく、勝利の道が築かれるものと見ています。韓国も、そのような意味で東西文明の新基地となり、太平洋文明の中心地として登場しつつあるのです。
私の提案
以上のような内容の結論として、私から一つ提案したいことがあります。それは中国から韓国を通り、日本に至るアジア圏大平和高速道路を建設し、全世界に通じる自由圏大平和高速道路を建設することです。中国大陸から韓半島を縦断して、トンネルか鉄橋で日本列島に連結し、日本を縦断する自由が保障される国際平和高速道路圏のことをいうのです。
もしこれが建設されるならば、アジア三国は文字どおり、平和高速道路で連結され、一体化することができます。そのようになれば、経済や文化交流が頻繁になり、文字どおりアジア文明共同体が形成されるでしょう。中国もこれに賛成し、韓国はもちろん、日本も言うまでもなく賛成するでしょう。アメリカとドイツも自然に加担するようになるのです。
このように、私たちが提唱する理念によってこの案が成就すれば、アジア各国の国民は、お互いに自由に往来できるようになり、その結果、北朝鮮は軍事力による侵略の野望をあきらめて、平和的統合の道を選択せざるを得なくなるでしょう。こうしてアジア人の結束を固め、黄色人種を中心とした上下層を連結するようになるのです。
このような理想を具体化するために、私たちを中心として、日本とアメリカと中国に居住する韓国同胞を結束させ、技術圏を形成するのです。そうすれば、日本とアメリカの方向も自動的に一致し、全世界的に自由が保障された新経済基盤の上に平和高速道路圏を発展させるのです。このようにして歴史的宿願だった上層圏と下層圏を一つにする理想が果たされ、アジアの自由高速道路が完成することによって、黄色人種の大移動が実現されるのです。
私たちはここアジアを起点として、絶対価値である神様の愛を中心に、現実的統一経済圏を実現して、東西新文明を結合し、新しい世界の平和を具現しようというのです。
このように西洋文明が東洋文明と結合し、新しい太平洋文明を迎えようとする、そのような文明の移動期において記念するに値する、韓国で開かれる「科学の統一に関する国際会議」に100数カ国から参加された著名人の皆様の洞察と理解と具体的な協力があることを希望してやみません。ありがとうございました。